と。

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昇給した話

この話の続編?になるのかもしれない。

socinuit.hatenablog.com

結論最大2倍になりました*1。定数についてはこの辺を参照してください。

socinuit.hatenablog.com

転職活動は18年6月から

入社して1月は皆さんご存知研修があると思いますが、私はそこで「あ、しんどいなあ」と思うことが多くありました。

まず「社会人とは」みたいな話を無限に受けることになるのですが、社会学専攻をしていた手前「労働者にすぎないのに社会の主要構成員であるかのような振る舞いを求められる」ことに違和感と不快感を呈さずにはいられませんでした。

正直「この会社で働くとはどういうことか?」みたいな話を同期と話し合うあたり、帰属意識の醸成としては最悪な手だなあと思いました。そりゃ内定受諾後の内定辞退率75%になりますよ。

本格始動は9月から

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上の記事で書いたように「新人であることを」理由に理不尽を押し付けても問題ないという価値観で会社が動いているのを知って「この会社に長くは居たくないなあ」と思うようになったので、本格的に転職先を探すようにしておりました。

ただ、理不尽に対しては実際精神科に通って睡眠薬をもらうくらいには参ってしまったので、書面にてお気持ち表明し、役員の頭を下げさせました。が、結局は「水に流してほしい」と言われたので笑顔で「わかりました」と言いながらいつまでも根に持ってやろうと思っています。

今思えば役員たちは無自覚にハラスメントをしており、社員の体型を指摘したり、交際相手や婚姻関係について詮索したりと、私の価値観からすると我慢できないような会話を繰り返しているようです*2

一方で部署ではExcel地獄で、「RやPythonを使ったデータ分析や統計モデリング」をするつもりで入った私は、ただ記述統計する以上の必要がない職場に物足りなさを感じていました。

そこで出会ったのがkaggleであったりして、仕事での不満を趣味で晴らす毎日が始まったのです――。

役員が変わった

ある日役員総入れ替えが起こり、会社が大きく変わることがわかりました。

組織運営がどう変わるかは別として、自分が関わりたくない役員がほぼいなくなることは僥倖でした。

人間関係が転職理由にならなくなった以上、本格的に「逃げるための転職活動」から「自分の価値をあげるための転職活動」に大きくシフトできました。

純粋にスキルを磨きながら、市場価値の高い人材として雇われることを志向できるようになったことはとても幸運でした。

仕事内容が変わった

「記述統計以外のスキルを磨く」ために何をすればいいのか考えていたところに、プロジェクト単位の研究開発系の案件が降ってきました。

モデリングの必要性は別として、比較的高度な考え方や検証事項、機械学習の基本的な知識などが求められる案件で「コレしかない」と思い、ダメ元で顔を突っ込むことにしました。

結論、私と上長以外に、議論に参加できるような人材が会社にいなかったのですが。

内容はとても充実していました。今思えばもっと妥当なモデリングはいくらでも思いつきますし、公開したらきっとkaggleのテーブルコンペで無双している某社の人たちからボコボコにされるような内容だと思いますが、それでも、「多分こういうことをやりたいんだな」というものを見つけられたことは収穫だったと思います。

「きぬいとさんと話して入社を希望しました」という就活生が現れた

現職は若手社員が会社の採用・広報に携わる仕組みになっていて、インターンシップや説明会などによく駆り出されています。

だいたい当番制で、回毎に担当者を変えて負荷分散しながら運営しているのですが、あるインターンで、「きぬいとくんの部署の話を聞きたい人が来てるんだけど」という要請を受けたことがありました。

その当時は、その人が「こういうスキルを持っているがこっちのスキルに自信はなく」というような話を聞きつつ、「スキルセットのポテンシャルはある。足りない部分は私が教えられる範囲なら全力で教えるし、教えられない範囲だとしても勉強会やセミナーには積極的に行けるようにしたいですね」みたいな返しをしたかなと思います*3

インターンシップや説明会で応募してくる人はたかが知れていると思い、あまり深く考えず、それでも何かの足しになればと思ってお話をしていましたが、なんと応募してくれたらしいので驚きました。

面接でも「きぬいとさんの話を聞いて入りたいと思った」と話していたらしく、さらに驚きました。

今のところ、無事私の同僚として入ってきてくれる意志をもってくださっているようです。正直驚きの連続ですし、口を滑らせたきぬいとをぶん殴りたいところですが、

こう言われて嬉しくないわけでもないので、この内定者が働きやすいような部署になるように、ちゃんとやっていけたらいいなあとも思うようになりました。

転職活動で内定をもらった

いくつか転職活動を通じ、最終的に4社から内定をもらいました。

どの会社も1年目の年収の4割〜5割増し程度(賞与含む)で、第二新卒としてのポテンシャル枠でした。

エージェントからは「きぬいとさんは非常に高い評価を受けていますよ!」とよく言われており、もともとマイナスに振り切れている自己肯定感が少しプラスに寄りはじめました。

何より「自分のやっている仕事と、自分がもらっている報酬との間には大きな乖離がある」ということを、外部の人に認めてもらえたことが嬉しかったのは間違いないです。

社内で、社内だけの成果でコレを訴えても、きっと「新人だから」を理由に認めてもらえなかっただろうなあと思っていました。

それでも十分なレベルの給与だったので、正直金を理由にしたときに、心理的安全を確保できそうな1社を基準に退職交渉をしようと思いつつ、新年度を迎えたのでした。

組織体制が変わった

新年度を迎え、もともと所属部署の部長だった人が、所属部署が属する本部の役員に昇進しました。

社内政治的にも評価を反映してもらえるようなところに人脈が移り、「もしかするかもしれない」と思いました。

また、組織体制が大きく変わり、現職部署での業務が会社の主要な事業として拡大する方針に大きく転換しました。そのため人事戦略としても大きく人を募集する方へ動き、仕事としても重要度が大きくなりました。「このタイミングでかぁ」と思いました。

部署での仕事はExcel地獄でしたが、研究開発系の案件は好きにやらせてもらっているので、RやらPythonやらをフルに使って仕事を捌き続けていた結果、Excelで地獄を作ることから離れて仕事ができるようになったので、部署での不満も小さくなりました。その上、関連会社の友人と社内ツールでやり取りできるようになり、そこで適宜愚痴を漏らしながら仕事ができるようにもなったので精神的にもド安定になりました。

ただ、RやらPythonやらを使って仕事を捌いた結果が基本給手取り18万、残業代青天井という「効率化するほど非効率」な雇用条件であることに対して不満が高まりつつありました。年功序列の給与でやってられるか、という気持ちは、部署への貢献意欲とは別に膨らんでいきました。

基本は年功序列。2年目での昇給は望みは薄いだろうと読み、4月3周に、内定1社のオファーを見せながら、上司に「7月からこの会社に行きたいと思っています」と伝えました。

上司はショックを受けていましたが「そうだよなあ……きぬいとくんのスキルは色んな所が欲しがるよなあ……」と言いつつ、本部長とも面談してほしい旨をもらい、翌日から退職交渉を始めました。

その翌日、また別の研究開発案件が7月から始まる相談を受け上司と「このタイミングでかぁ……!」となったり、「でもそういう人材を探すのは僕の仕事だから……」とあくまで背中を押してくれる上司に申し訳なさが重なりました。

迷うくらいの条件に見えた

本部長は「きぬいとくんが退職交渉してくるかどうかに関わらず、待遇の改善は考えていた*4」「会社の人間としては待遇の前例は壊しに行くつもり」と言ってくれました。正直エージェントから「昇給を条件に出してきますけど信じないでください、長期的に見て悪手です」と言われていましたが、役員が変わり、組織体も変わっていて、状況が状況なので、主観的に見れば条件はイーブンでした。「今夜オファー面談があり、週末をめどに最終的な判断を求められている。私は辞める前提で動いているが正直条件はイーブンなので、明日また相談させてほしい」という旨を伝えました。

条件がイーブンだと人は迷います。あまりにも迷ったのでTJOさんはじめ、いろいろな方にDMを飛ばしました。

今思えば欲しい答えは「『残留』が最適な戦略となる条件」だったのかもなあと思います。結局不満になっている条件は金だけだったので。部署での仕事は専門性を増し、自分も勉強しながらいろいろ新しい環境の構築にチャレンジできる状況にもなりつつありました。

TJOさんからは「転職をするにあたって、現職の年収がベースになるから、現職で年収をあげて転職をするほうがいいのでは」というアドバイスを参考にし、とはいえオファー面談を受けて迷いが晴れれば、オファーを受け転職に行こうと思いました。

オファー面談を受け「給与面」と「業務面」の最終的な擦り合わせを行いました。魅力的な会社ではありましたし、合う人には合うと思いますし、実際私にも合う会社だったと思います。ただ、給与面での交渉には乗ってもらえず、仕事面の不安感を払拭できませんでした。具体的に言うと、「○○のスキルはないのですが、具体的にどのようにキャッチアップを支援してくれるのか」という質問に対して、明確な回答を得られませんでした。

このあたりでエージェントの態度が大きく変わりました。「きぬいとさんのスキルはそこまで高い評価をされていない」とか「そのぬるま湯みたいな会社でやっていくほうが良いのなら内定辞退したほうがいい」とか「おいおい手のひら球体関節なのか?」くらいの手のひら返しに変な笑いが出ました。正直Twitterで紹介を受けた会社のほうが「今の会社でもここが良くなれば残るのも価値をあげられる」とか、私のキャリアをちゃんと考えてくれたように思います。

あらゆる条件がイーブンになった気がした

翌日「条件はイーブン。求めるのは金。内定先4社から受けた年収評価はこれ。出せないなら辞める。逆に出せるなら採用や開発環境の改善含め今以上に働いてやる、対等な交渉を望む」という話をし、平成最後の給与交渉を行いました。「二転三転してすみません」と言いましたが上長は「考え直してくれただけ本当にありがたい」と言ってくれ、本部長も「わかった、ちょっと役員と戦争してくるから」と言ってくれました。 その後1時間かけてやりたいこと、部署に足りないことを整理して話しました。ぶっちゃけ上長と対等に部署のあり方を考えていくことが一番大きな経験だったと思います。結果部署の方針と自分のキャリアとのギャップをはっきりさせることができ、その大きさが転職を必要とするほどのものでもなかったことに納得できたので、結局金だったんだなあというところに落ち着きました。

そして結果年収は上がり、データアナリスト2年目としては大体市場価値相応の待遇と相成りましたとさ。

結局どうだったの?

残留と転職が釣り合ったのは

  • 1年目なので転職先もポテンシャル重視にならざるを得なかった

  • 役員含め、会社上層部の組織体制が大きく変わった

  • 上長・本部長がデータアナリスト・データサイエンティスト一般の市場価値をある程度把握していた

  • 心理的安全性がある程度確保されている職場環境だった

  • 上長が前例のない話を持っていくだけの覚悟をしてくれていた

というあたりが大きいのかなあと思います。

心理的安全については組織改編の都合もあったので、偶然も味方した結果です。もともと所属部署内では比較的精神的な苦痛なく働くことができていたので、それがさらに改善されたのは大きかったです。

その上で、現職が待遇についてここまで大きく動くことは想定外でした。年功序列から離れられないJapanese Traditional Companyだと思いこんでいたので、まさか前例ぶっ壊してまで昇給してくれるとは思わず驚きました。

偶然にも私の話を聞いて、現職で働きたいと考えてくれた学生も来てくれました。

その学生に対する期待を裏切るような部署であってはならないと思っているので、今ある開発環境を改善したり、興味深い仕事を提供したりできるよう、努力したいと思います。

それらを通じて自分も更に価値のある人間になれたらなと思います。

おわりに

雑な経緯ですが、こんな感じで私は残留しました。

退職エントリーは面白いし、転職は待遇や環境を変えるために手っ取り早い戦略だと思います。それは間違いないです。

ただ、特に1年目の人間なら、ハラスメントや人間関係に苦しんでいないという場合、給与面の交渉をするのも悪い手ではないかと思います。

外をみたときの自分の価値と、社内での自分の評価にズレを覚えたとき、そのズレを伝えて会社がどういう反応をするかも大きいのではないか、と思います。特に非Tech系では。

ぶっちゃけ悩んだら色んな人に相談していいと思います。エージェントに全部相談すると転職が最適解であるかのように誘導されるし、社内だと残留が最適解であるかのように誘導されます。

三者の相談相手を確保するのは大事かなあと思いました。人によると思いますが。

きぬいとさんの次回作にご期待下さい。

*1:ボーナスが高いとでかくなるタイプです。月収ベースだと1.5倍でした。

*2:伝聞ですが、女性社員に対しては「合コンに行って『お持ち帰り』されて女を磨け」とか、頭を触るなど、時代錯誤なコミュニケーションを繰り返していたという話も聞いてます。

*3:新卒1年目のペーペーが大きく出たなと思ってますが、上長が私に提供していることでもあり、私も部下を持ったら最低限提供したいことだとは思っていたので、「昨今話題のデータサイエンス系の事業会社と比べるとしょぼいけど」という前置きをしつつ、こういうお話をしています。

*4:今思えば「やっぱり裁量のほうがいい?」とか「時間管理だとやりづらい?」とかさり気なくそんな話をしていました。フラグはあったんだ――!